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スは宇宙(スペース)のス (創元SF文庫)

スは宇宙(スペース)のス (創元SF文庫)

『ウは宇宙船のウ』と対になる、ブラッドベリの自選短編集。全体を通して、文明の進歩とそれによる人間への影響というテーマがはっきりとしていて(関係ない作品は『別れも愉し』『透明少年』『泣き叫ぶ女の人』くらいだろうか)、統一感のあるラインナップになっている。

『浅黒い顔、金色の目』は火星を舞台にした美しい短編。この本の中では一番のお気に入り。

 ★★★★★


華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

華氏451度 (ハヤカワ文庫SF)

不朽の名作というのはその通りだと思う。国語の教科書に載せられても不思議でないくらいだ。にもかかわらず自分がこれをいまいち好きになれないのは、オタク的な要素が少ないからなんだろうなと思う。

★★★★★


刺青の男 (ハヤカワ文庫 NV 111)

刺青の男 (ハヤカワ文庫 NV 111)

数あるブラッドベリ短編集の中で、自分が一番好きなのがこれ。

どの話も掛け値なしにすばらしいけれど、個人的には『今夜限り世界が』を推す。あらゆる”終末もの”の中でも最高の作品だと思う。家族をテーマにした『ロケット・マン』と『ロケット』は静かな感動をよぶ美しい物語だ。ホラーも充実していて、『日付のない夜と朝』『町』『マリオネット株式会社』「ゼロ・アワー』『コンクリート・ミキサー』はどれも異なるタイプの恐怖がある。

★★★★★


火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

火星年代記 (ハヤカワ文庫SF)

ブラッドベリの描く火星はノスタルジーの象徴であって、未来のガジェットではない。ほとんどの場合、それは「かつて地球に存在した懐かしい風景」という使われ方をする。どれだけ時間が経っても人間は変わらず、歴史は繰り返す、多分そういうことだろう。

年代記の名の通り、火星を舞台にした長いスパンのお話だ。通しで読むという読書体験があってこそ、最後の「百万年ピクニック」で深い感動を得ることができる。各エピソードは長さもジャンルも様々で(たった1ページしかない掌編もある)、メリハリがあって退屈はしない。

ハヤカワSFから出た新版は文字が大きく、訳も平易で読みやすい。とにかく完成度の高い短編集で、誰にでも安心しておすすめできる。

★★★★


ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)

ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)

ブラッドベリ自選のヤングアダルト向け短編集。人類の宇宙進出を希望に満ちた視点で描いた、ロマンチックな話が多い。こういうのを子供に読ませたいという、ブラッドベリの意思を勝手に感じる。

作品の選抜には文句はないけれど、翻訳が若干古めで、この本はその点で少し人に薦めづらい。ブラッドベリの短編は書籍ごとにかなり重複していて、比較的近年に出た短編集で読む方が楽なことが多いからだ。この本について言えば、「Rocket」を一貫して「宇宙船」と訳しているのがすごく微妙に感じる。

★★★★★