現代文明と相反する世界を描くことで批判をやるのはよくある手法で、この傑作もあらすじだけを読むとその手の作品のように見える。しかしそれは本質ではない。これは、一人の男が『時を一つの完全なものに結合させる』までをたどる物語であり、その過程にこそ価値がある。なぜなら物語の構造がそのものが、中心テーマである『同時性理論』を模っているからだ。始点と終点は最初から定まっている。男の誠実さが、それらを繋げるのだ。
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異世界を舞台にした物語の質は、作者がどれだけ文化人類学的な素養を持っているかによって大きく左右される。その点でル・グィン以上の書き手はいない。
惑星「冬」に住む人間は、一定の周期で男女の性別が入れ替わる。衣食住や宗教どころか、人々の認識が根底から異なる世界。それに確かな現実感・説得力を持たせるル・ヴィンの筆力には驚嘆するしかない。
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寒さ→餓え→敵襲が繰り返される、ストイックな冒険譚。旅の描写フェチな人はかなり満足できると思う(自分がそうだ)。トールキンが好きな人とかにおすすめ。
とりあえずプロローグがすばらしいということを書いておきたい。ファンタジーの魅力を散りばめたような、美しい伝承の物語だ。これだけ読んでも損はしないと思う。
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