ハインライン作品のテーマは本当に毎回毎回同じで、そのぶれのなさを自分は好ましく感じている。そのテーマというのは早い話が「大人として成熟しろ!」ということなのだけど、この大人という単語には実に多くの意味が含まれている。
「銀河市民」の主人公は少年であり、成長の過程がそのままストーリーとなっているため、テーマそのものと相性がいい。ハインラインの思想がどんなものなのかを理解するにはうってつけである。もともと青少年向けに書かれたものだからハードな描写はないし、娯楽性も高い。ハインラインの著作はどれも抜群に読みやすいので、「銀河市民」が格別に易しいわけではないけど、入門に向いた作品であることは確かだ。
物語は大きく3つのパートに分かれる。SFとして面白いのは圧倒的に自由商人編で、この作品で最も魅力的な部分だと思う。銀河系を飛び回るスケールの大きさ、他種族とのユニークな交易の様子、閉鎖空間における社会制度の緻密さなど、どれも興味深い。
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ハインラインの他の作品と比較しても際立つ、サイエンスフィクションの最高峰。これの後だと『夏への扉』のような微温的な物語に耐えられなくなる。
ハインライン作品の例に漏れず、読みやすく面白い。およそ難解な箇所というのがほとんど存在しないので、本当に誰でも読める。分厚さとタイトルの威圧感に尻込みしている人がいたら、安心して手にとってほしい。
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若者が軍隊でしごかれる話といえば「フルメタルジャケット」が有名だけれど、それと大きく異なるのは、教官や先輩たちが主人公のメンターとしてきっちりと機能している点だ(「軍隊は温情主義的な組織である」)。つまり、厳しいけれど優しいのだ。
ガンダムなどリアルロボットの原型である、パワードスーツのアイデアを生み出したことでも有名。挿絵は無骨なデザインでダサ格好いい。
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役者である主人公が口八丁手八丁で、次々と訪れる危機を切り抜けていく、とにかく痛快な娯楽小説。ハインラインの作品はどれもそうだけれど、読みやすく、そして凄く面白い。
主要な登場人物がどれもクレバーかつ人間的魅力があり、読んでいて気持ちがいい。頭が悪いキャラクターは、たいていの場合邪悪なキャラクターより人を不快にさせる。
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